タウポの夜/瓦井良幸


新しいホストファミリーでした。
「お腹もすいているでしょう」。コンサート後の空腹には有り難いことです。美味しそうなサンドイッチに手を伸ばした矢先に一帯が闇に包まれました。ゴードンさんがスイッチを触ってもダメ。ブラインド越しに外を見てみると周辺も真っ暗でした。停電だ、なんたるタイミング。お母さんのジェーンさんが燭台と三本のキャンドルを持ってきました。暗闇に灯る灯りに何ともいえない高揚感を感じました。偶然発生した事態に、ジェーンさんも「ファンタスティック」と喜びを笑みに浮かべています。「さあ召し上がれ」「イタダキマス」。

ゴードンさんもLEDのランタンを探しだし、テーブルへ置きました。その瞬間停電が復旧。全てが明るくなり、四人で顔を見合わせて安堵感と笑いに包まれました。一気に心が近づいた瞬間でした。
 (タウポにて)